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『笑顔6』
ある朝ぼくは、大好きなメリちゃんにサヨナラした。
眠ってるメリちゃんの頬にそっとキスして、隣でイビキをかいてるヒロの鼻を踏んずけて、部屋を後にした。
バイバイ、メリちゃん。
しんとした空気の寒さに身体を震わせ、スンと鼻を鳴らし上を見上げると、バニラ色の空が広がっていた。
出会った日を思い出す。
『こんなところにいたら、風邪ひいちゃうよ』
冬の寒い朝。
生まれてすぐに捨てられたぼくを、あったかい手で抱き上げてくれた。
『うちへ、おいで』
あの日から、ずっと一緒。
朝はひとつ先の角までメリちゃんを見送り、夜はメリちゃんの足音とともに帰る。
『タロちゃん、ただいま』
『タロちゃん、今日は嬉しい事があったよ』
メリちゃんはいつも元気で、優しくて、時々、泣く。
メリちゃんの隣で眠り、メリちゃんの隣で目覚める。
ぼくの、幸せ。
なのに、ヒロが現れてから、メリちゃんは変わっちゃった。
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