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ケーキを差し出すロキを見て、恍惚な表情をしていたルフィーナは直ぐに不満顔。
今度は何だろう?
と思いつつ、ロキがルフィーナに視線で問い掛けると、ルフィーナは軽く唇を尖らせて一言。
「食べさせてはくれぬのか?」
「バッ! バ――」
「バカな事言わないでよ!」と言いたかったのだろう。
赤い顔で口を開けたロキだったが、「バッ!」と言った矢先、ケイのすがるような目で拝んでくる姿が、ロキの目に飛び込んでくる。
「…………」
ケイのその姿を見てしまったロキは、恥ずかしさから耳まで赤くしつつ、ジッと見つめてくるルフィーナの口元にケーキを持っていく。
すると、ルフィーナはトロンとした目と、恍惚とした表情に戻り、差し出されたケーキにパクついた。
「うむ。美味じゃ。これは……夫の唇が触れ……唾液が混じったケーキじゃ……嗚呼……たまらぬ」
涙まで流して喜ぶルフィーナ。
そんなルフィーナを、白けた目で見つめたロキは、恥ずかしさに耐えるように手を震わせている。
「お疲れ様。今度ケーキを持ってくる時は、ルフィーナさんの分を別に持ってくるね」
手を震わせていたロキの肩に手を乗せ、晃が申し訳なさそうに言うと、ロキは晃に首を振ってみせる。
「クマさんが気にすることじゃないよ。
問題なのは、ケイの食欲とルフィーナさんだから……」
そう言いながら、ロキがルフィーナからケイに視線を移すと、ケイは思いっ切り安堵した様子で胸をなで下ろしているところだった。
「全く……」
安堵した様子のケイに、文句を言う訳でもなく、ロキは小さくため息を吐き出した。
と、ここで予想外な行動を起こす人が……。
言わずもがなルフィーナだ。
ケーキを食べたルフィーナは、何やら大事な理性が吹き飛んでしまったらしく……。
ロキの視線が、自分から外れたと見るや、一瞬目をキラリと輝かせ、電光石火のスピードでロキの両脇に手を入れ、一気にロキを抱き上げた。
「さぁ、アナタ。キスを終えた今、更なる高みへと舞い上がろうではないか」
「え? え? え?」
いつの間に抱き上げられたのかすら分からぬまま、ロキは円らな瞳を丸くする。
そして、戸惑うロキに妖しく輝く目を向けたルフィーナは、ロキを抱き上げたまま教室の外へ出ようと歩き出すのだった。
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