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ある日の授業中――。
ルフィーナは、今日も授業などそっちのけで、真剣な表情で黒板を見るロキの横顔に夢中。
「ハイッ! 元素となる魔法陣を理解し、使いこなすことを考えた時、大切なのは自分自身の魔力の量です!
この魔力の量については、人間・獣人・竜人・ドラゴンの順で多くなり、それぞれの種族で最大値や平均値が定められています!
ハイッ! この最大値と平均値はテストに出すから、みんなしっかり暗記すること!」
と、ここで黒板をコンコン叩きながら話していた教師が、ふとルフィーナに目を向ける。
視線を感じたルフィーナが、不機嫌そうな顔で教師を見ると、教師はビクビクしながら話し掛ける。
「ルフィーナ様。あの、元素となる魔法陣は、いくつ世界に存在しているのですか?」
教師の問いに、ルフィーナが眉間にシワを寄せる。
「そなた。妾の至福の時間を、そんな下らぬ問い掛けで邪魔するのか?」
不機嫌な様子を隠そうともしないルフィーナを見て、教師が小さく悲鳴を漏らすと、すかさずロキが口を挟んだ。
「僕も知りたい。元素の魔法陣って、いくつ存在するの?」
知的好奇心おう盛なロキの問い掛けに、ルフィーナは途端に目尻を下げ、ロキへ手を伸ばす。
「アナタ。そもそも、元素となる魔法陣を考えるより、世界に存在する全てのモノを考えるのじゃ」
「全てのモノ?」
ルフィーナが伸ばしてきた手を掴みつつ、ロキが問い返すと、ルフィーナは負けじともう片方の手を再度ロキに伸ばす。
「そうじゃ。この世界に形あるもの全てが、元素となる魔法陣を持つ。人間には人間を形作る魔法陣があり、妾達ドラゴンには、ドラゴンを形作る魔法陣がある」
「じゃあ、無数に元素となる魔法陣が存在するってこと?」
伸ばされた手を再度掴み、ロキがまたも問い返すと、今度は顔を近付けながらルフィーナが頷いた。
「その通りじゃ。母上。始まりの魔法陣は、沢山の生き物や物質を、魔法陣と共に生み出したのじゃな……ん~!」
顔を近付け、遂にはキスしようと唇を尖らせるルフィーナに、ロキはサッと顔を逸らして避けたかと思うと、掴んでいた両手を放してノートに向かう。
「先生。続きを話して下さい」
ノートに書き込みながら、ロキが教師へ促すと、まるで何事もなかったかのように授業が再開し、ルフィーナは悲しそうな顔で一言。
「妾の夫が冷たい」
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