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窓から差し込む日の光と、小鳥の囀る声が、少年に朝がきた事を教える。
ベッドで規則正しい寝息をたてていた少年は、今年17歳になるハズなのだが、小柄な体型と、サラサラな茶髪、比較的大きな目のせいで、12~3歳位にしか見えない。
そんな少年を起こすように、窓から差し込む光が少年の顔に当たり、少年は顔をしかめたのだが、何故か光は何かによって遮られてしまう。
「う~ん……」
光が何かによって遮られたおかげで、少年はしかめた顔を再び安らかな寝顔に変え、規則正しい寝息をたて始める。
差し込む光を遮り、自分の寝顔を食い入るように見つめている“誰か”が居るなど、少年は気付きもしない。
その誰かは、少年を起こさない様に注意しつつ、そっと髪を撫でつけたかと思えば、段々と鼻息を荒くしていく。
「嗚呼……可愛い。可愛いぞ。アナタ。妾は……妾は……」
少年の髪を撫で、少年の寝顔を見た誰かは、何やら興奮し始めたらしく、終いには辛抱たまらんと言わんばかりに、少年の寝ているベッドへダイブするのであった。
「アナターー!」
「うわああああああああ!」
寝ているところを襲われた少年は、たまったものではない。
いきなり聞こえた声と、体にかかる重みに、少年は悲鳴をあげたが、既に誰かによってガッチリと体を捕まれてしまい、動けなかった。
「ちょっ! ルフィーナさん!
朝からやめてぇ!」
思わず悲鳴をあげたが、ルフィーナと呼ばれた誰かは聞いていない。
「嗚呼……愛しい人。今日も、何とも言わせぬその顔が、妾を狂わせる」
「朝から狂わないで! 後、重いよ……太った?」
文句を言いながら、女性に尋ねてはいけない事を少年が口にすると、ルフィーナはピタッと動かなくなり、そのまま鼻をすすり始める。
「ううううう……美しい“妻”に対して、いきなり『太った』とは……妾に夫が冷たい。これが――」
「それはもう聞き飽きたからどいてよ!」
相手が泣き声を漏らしても、少年は容赦ない。
鼻をすするルフィーナを押しのけて、少年はようやくベッドから抜け出した。
そして、ベッドから抜け出すなり、少年は未だ泣きやまぬルフィーナを部屋から追い出すのだった。
「全く……油断も隙もないよ」
ブツブツ文句を言いながら、少年はパジャマを脱ぎ捨て、クローゼットから制服を取り出す。
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