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一階に降りていくと、直ぐに食欲をそそる匂いがロキの鼻腔をくすぐる。
「お腹が減ったじゃろ?
今日は、妾も義母上を手伝ったのじゃ」
そう言って、熱い視線をロキに向けるあたり、ロキに褒めて欲しいのだろうが、ロキは軽くルフィーナの視線をスルーして母親のもとへ。
「おはよう」
入るなり、ロキは台所にたたずむ母親の背へ声をかける。
すると、笑顔で母親がロキに振り返った。
「おはよう。ロキ。早くしないと学校に遅刻するわよ。ルフィーナちゃんも、早く座って」
この母親。今年で48歳になるのだが……「性格がフワフワしてる」と、ロキから言われるような性格をしている。
だからなのか、腰まであるロキと同じサラサラな茶髪を縦巻きロールにしていて、小振りな鼻に、丸く大きな目と、とがった顎、更には小顔と……着ている服が花柄や、ピンクが中心な服装から、全体的な雰囲気は未だに若い。
この母親が居たからこそ、ルフィーナが押し掛けてきて、すんなり家の住人になれたと言っても過言ではない。
そんな母親だからこそ、ルフィーナが慕い、「義母上」と彼女を呼びながら、家事を手伝っているのである。
「ルフィーナちゃん。お茶碗取ってきてくれる?」
母親は、ルフィーナに茶碗を取るよう頼みながら、クルクル鍋をかき混ぜて、鼻歌を歌っているのだが……。
「義母上。お茶碗じゃぞ!」
頼まれたルフィーナが、急いで茶碗を持って来たにもかかわらず、既に母親には聞こえていないようだった。
「…………義母上?」
自分で口ずさむ鼻歌にノってきたらしい母親は、鍋をクルクル腰をフリフリ……。
ロキにとって、この母親の行動は毎度の光景なのだが、今日はタイミングが悪い。
ノりにノっている母親に近付いて、しっかり母親の頭を押さえつけた。
「お母さん!」
「あら? もうお茶碗持ってきてくれたの?」
母親も慣れたもので、頭を押さえつけられたまま、にこやかにルフィーナから茶碗を受け取ると、するりとロキの手から逃れ、直ぐに朝食をテーブルに並べ始めた。
「うむ。毎度の事ながら、義母上の身のこなしは素晴らしいのぅ。妾も見習わねば」
「一応言うけど、見習っても良いけど、僕を襲う事に活用しないでね」
感心し、しきりに頷くルフィーナへ、すかさずロキが注意すると、ルフィーナは真剣な表情で悩み始め、困った様子で言った。
「それ以外の、何に活用すれば良いのじゃ?」
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