試験だよルフィーナさん!

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「ヌッ! ヌヌヌッ! アナタ! いつの間にそこへ転移したのじゃ?」 今まで座っていた椅子の傍に転移したロキを、恨めしげに見つめ、ルフィーナが拳を震わせながら問い掛けると、ロキは椅子に腰掛け、料理に箸を伸ばしながら言った。 「ルフィーナさんが抱き付いた時だよ。 僕がルフィーナさんに話し掛けたら、絶対ルフィーナさんは何かするでしょう? だから、事前に椅子の傍にカードを置いてたんだ」 「流石ロキだなァ。ルフィーナさんの行動が分かってる」 ロキの説明に、ケイが感心しながら、パクパク料理を食べ進めていると、ルフィーナの額に青筋が浮かぶ。 「ケイ。食べるか感心するかのどちらかにせい。同時にやられると、馬鹿にされているようで腹が立つ」 獣が唸るような声で話すルフィーナに、ケイが身震いすると、その様子を見ていたロキが肉を箸でつまんで、ルフィーナに見せながら一言。 「ハイ。あ~ん」 「あ~ん♪」 怒りの様子などどこへやら。 瞬時にロキの隣へ移動したルフィーナが、とろけるような笑顔でロキの差し出した肉にパクついた。 「ん~♪ 美味じゃ! アナタ。次は煮物が食べたい」 「ハイハイ……」 天にも昇るとは、今のルフィーナの事を言うのかもしれない。 両頬に手を添え、美味しそうに目を細めたルフィーナは、調子に乗ってロキにリクエスト。 ロキは、至って普通の顔で煮物をつかみ、ルフィーナへ。 「アナタ。『あ~ん』が無い」 「……あ~ん」 「あ~ん♪」 至福の表情を見せるルフィーナに対し、ロキは白けた表情。 見ていて、これほど表情に違いがある2人も珍しい。 「うん。幸せそうに食べてくれるのを見るのって、ホント嬉しい事だね」 「いや~。クマさん。もっと別の事が気にならネェ?」 対照的な2人の様子を見て、晃が満足げな声を漏らすと、ケイがすかさずツッコミを入れる。 すると、晃は嬉しそうにこう言った。 「ケイ君と、ロキ君の喜ぶ顔も見れたし、ルフィーナさんも喜んでくれた。その顔が見れただけで十分だよ」 「そう言うもんかね……」 食べさせてもらい、上機嫌なルフィーナを見ながら、感心したような声でケイが苦笑する。 「アナタ。妾と一緒にお酒を飲まぬか?」 「嫌だ」 ケイや晃が見る中、ルフィーナの要求は続くのだった。
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