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四六時中ルフィーナに付きまとわれているロキだが、ルフィーナの周りに人集りが出来ている間や、体育の間などは、よくこのケイと晃の2人と一緒にいた。
「クマさんはイイよ。料理人になるのが夢なんだろ?
でも、俺とロキは森羅に入りたいんだぜ?
だから、勉強してても不安なんだよ」
ケイが正直に言うと、クマさんと呼ばれた晃はニコニコ顔で一言。
「ケイ君。この間のテストの点数、悪かったもんね」
「う゛」
晃のツッコミに、ケイが頭をかきむしると、ロキが笑って数学のテキストを取り出し、ケイにアドバイスする。
「今日のテストなら、多分ココが中心だよ。コレと……この数式を覚えておけば、何とかなると思うよ」
ロキが教えると、ケイは身を乗り出すようにしてテキストを覗き込み「よく分かるな」と感心している。
「この間テストがあったばかりだからね。あんまり範囲は広くないし、範囲の中で大切だって先生が言ってたのは、この数式だけだから……」
「成る程。流石はロキ!
一緒に森羅へ行こうな!」
感謝を表してなのか、ケイはロキの両肩をバンバン叩いて、早速数学のテキストを取りに自分の席へ。
その間、晃がロキの机に近寄ると、どこに持っていたのか、おもむろにタッパーを取り出し、ロキの前で中身を見せる。
「新作を作ってみたんだ。水梨とイチゴを使ったチーズケーキなんだけど、結構美味しかったんだ。ロキ君も食べてみてよ」
この晃。さっきケイも言っていたが、料理人になるのが夢で、色々な料理を作っては、美味しかった物を持って来てくれる。
ロキは、晃に「美味しそうだね」と言いながら、タッパーから小さく切り分けられたケーキを一切れ摘み、そのまま口へ。
「美味しい! けど……、なんだか水梨の味が弱くない?」
食べた後、ロキが自分の感想を正直に言うと、晃は「そうなんだよね」と言って、小さくため息。
「水梨の食感は出せたけど、水梨独特の甘味が出せなくてね。水飴を使うと、逆に水梨の食感が消えちゃうし――」
「オッ! クマさん!
今日はケーキかよ!」
悩む晃を遮り、数学のテキストを持って笑顔で近付いてきたケイを見て、晃は「しょうがないな」と言わんばかりに笑うと、タッパーをケイに差し出した。
「ありがとう!」
数学のテストなどどこへやら。ケイは、満面の笑顔で晃のケーキに手を伸ばした。
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