1438人が本棚に入れています
本棚に追加
「ウメッ! クマさんのケーキ美味いよ!」
ケイにとっては、水梨の甘みなど、どうでも良いようだ。
ロキがタッパーからケーキを後1つ摘む間に、「美味い」と連呼しながら、あれよあれよと言う間にケーキを平らげていく。
さて、コレで済まないのは、最早お約束。
「ケイ! クマのケーキを残しとくのじゃぞ! 妾も食べたい!」
あっという間に食べ尽くそうとしていたケイに、横からルフィーナの声が掛かる。
だが、時すでに遅く、ルフィーナが声を掛けた時には、ケイは最後のケーキを口に入れてしまっていた。
「ムガッ! ルフィーナさ……もう、食った後で……」
口の中に頬張ってしまったケーキを、飲み込むに飲み込めないまま、ケイがルフィーナに向かって話す。
そして、そんなケイから遠ざかるロキと晃。
いつの間にやら、周りにいたはずの取り巻きも居なくなり、背中から不機嫌な状態を物語るように黒いオーラをたぎらせたルフィーナが、椅子から立ち上がり、じわじわとケイに近付いていく。
「食うたのじゃな?
妾が言うたのに、全部食うてしまったのじゃな?」
黒いオーラを漂わせて、凄みを効かせて歩いてくるのだから、ケイにしてみればたまったものでは無いだろう。
「○×△※◇」
口の中にケーキが残っていたせいか?
純粋に恐怖からか?
意味も分からぬ悲鳴を上げ、ケイはロキへすがるような目を向ける。
すると、ロキは自分が摘んだケーキを見て思案顔。
何か考えているらしく、ケイの顔を見て顔をしかめた後、ルフィーナの顔を見て、少しの間黙っていたかと思うと、軽くため息を吐き出しながらルフィーナに声を掛けた。
「ルフィーナさん。少し食べちゃったけど……、僕の分をあげるから、機嫌なおして」
ケイを助けるためとは言え、ロキのこの言葉が、ルフィーナを狂わせる。
ケイに詰め寄っていたハズのルフィーナは、一瞬でロキの前に移動したかと思うと、前屈みになりながら、両手を眼前で組んで目を輝かせる。
所謂「お願いポーズ」をしたルフィーナは、ロキの持つケーキを見て一言……。
「間接キッスじゃな!」
黒い瞳をキラキラ輝かせ、頬はほんのり赤く染めているルフィーナは、可愛くもあり美しくも見えるのに、背筋が冷たくなってしまうのは何故だろう?
そんな事を思いつつ、ロキはルフィーナにケーキを差し出すのだった。
最初のコメントを投稿しよう!