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目を覚ますと、柔らかく点っている焚き火が視界に入ってきた。
それと一緒に魚も火に当てられ焼けている。
「朱葉……」
「ん?どうした?」
彼女は平然と紅蓮の髪を流して返事をする。あの悲劇の主人公の跡形など一片も見せはしなかった。
だから、俺もそれを聞くことは申し訳ない気がして聞けない。
「目が覚めたか。明日も早いから、食べたらすぐ寝ろ。いいな?」
「あ、うん」
魚を手渡され、それを口に運ぶ。
完全に流れを朱葉に呑まれてしまう。
「朱葉は食べないの?」
俺の言葉に彼女は多少驚きを見せた。しかし、またすぐに言った。
「私は食べた。君が私の心配をする必要はない」
「でも、なんていうか――」
この先は風によって遮られた。結局夢のことを打ち明けられなかった。
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