プロローグなど

2/24
前へ
/75ページ
次へ
闇雲に何も考えず、ただ必死に駆ける。暗闇の森の中を、宛もなく、ただ走り続けていた。 その直後に続くモノが三体、走るモノ達を追っていた。 まるで狩りのような光景だった。いや、狩りそのものなのだろう。追われているモノは崖から谷底に飛び込んだ。 追っていたモノ達は足を止める。獲物が崖から飛び降りて死んでしまったとふんだのだろう。 …… 「ケホッ……」 しかし、追われていたモノは生きていた。小さな咳払いをして汚れた身体を叩く。 それは紅い髪に、深み掛かった紫の瞳をした小柄の少女だった。 なに食わぬ顔をして髪をまとめて結う。それだけ見れば優麗で可憐な少女が睨む先には、真っ黒に身を包んだ少年が気を失っている。 なんで私がこんな逃げに走らなきゃならないんだ。こんな奴を庇って谷に落ちるなんて…… 「おい、しっかりしろ」 「うぅ……」 生憎この男、起きそうにないな。仕方ない―― 少女は小さな身体を目一杯に使って少年をおぶる。時期に追手は来るのは、彼女も承知していた。 少年を担いで行けば、必ず追い付かれる。 だからって……見過ごせるほど完成されてないんだ。私は……
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加