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闇雲に何も考えず、ただ必死に駆ける。暗闇の森の中を、宛もなく、ただ走り続けていた。
その直後に続くモノが三体、走るモノ達を追っていた。
まるで狩りのような光景だった。いや、狩りそのものなのだろう。追われているモノは崖から谷底に飛び込んだ。
追っていたモノ達は足を止める。獲物が崖から飛び降りて死んでしまったとふんだのだろう。
……
「ケホッ……」
しかし、追われていたモノは生きていた。小さな咳払いをして汚れた身体を叩く。
それは紅い髪に、深み掛かった紫の瞳をした小柄の少女だった。
なに食わぬ顔をして髪をまとめて結う。それだけ見れば優麗で可憐な少女が睨む先には、真っ黒に身を包んだ少年が気を失っている。
なんで私がこんな逃げに走らなきゃならないんだ。こんな奴を庇って谷に落ちるなんて……
「おい、しっかりしろ」
「うぅ……」
生憎この男、起きそうにないな。仕方ない――
少女は小さな身体を目一杯に使って少年をおぶる。時期に追手は来るのは、彼女も承知していた。
少年を担いで行けば、必ず追い付かれる。
だからって……見過ごせるほど完成されてないんだ。私は……
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