2人が本棚に入れています
本棚に追加
……
「ここは?」
「やっと起きたか」
「……え?君は?」
「私は朱葉、朱葉・D・ガルティだ」
わからない。なぜ私は名乗っているんだ?……そんな義務もなにもないのに……
「あ、ありがと。一人で歩ける。降ろしてくれ」
男の言う通り身体から引き離す。そして何も言わずに私は歩みをまた進めた。
男は私に合わせるように歩みを進めていく。
「あ、俺はキルト。あ、あのさ――」
「あ、ばかりだな。もっとはっきり話せないのか?」
「あ、ごめん」
言ったところで直りそうにない。現に結局【あ】を言っている。
呆れて、歩みを進める。
「ねぇ、ここは?」
「知らない。お前を連れて逃げるには無理がありすぎて、私は崖からここに堕ちてしまったからな」
「え?あんな高いところから!?」
「あぁ、私は人間じゃないからな。容易い」
「人間じゃない!?」
流石に話が突拍子もないことで、キルトは全く理解できていなかった。まぁ無理もないだろうけれど……
「とりあえず、何も考えるな。前だけ見て進め。振り返れば明日はない」
「あ……うん……」
最初のコメントを投稿しよう!