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上衣を脱いで眠っているキルトに優しくかける。そして立ち上がり、背に担いでいた赤い大剣を抜いた。
傍から見ると彼女ほど丈があるその剣は、彼女が触れてから熱を発していた。
「出てこい。居るのはわかっている」
「……泥棒が、強気ですね?」
姿を見せたのはキルトの追手だろう。私を泥棒扱いするところからして推測できる。
しかし、この男も不運であろう。私を相手にさせられるなど……
……
「とりあえず、君は処刑します」
「貴様のような奴に、この小僧はやらん」
相手は長く細い鎌のようなものか……それに比べ、私は真逆の大剣である。
こうして見ると勝てないのは私だろう……だが、――――。
「切り刻みますヨ!」
一声を上げて突撃してくる相手に剣を振り上げ、力を剣に集中させる。空間を歪ませ、水分を干上がらし、空気を焼く。
剣の周囲には火の粉が舞い出した。
相手は私から見て左から大きく鎌を振り込んだ。しかし、紙一重で空を裂いた。
「外しましたか。しかし――」
「遅いな!」
紙一重で回避した瞬間、私は前に踏み込む。その一歩で相手の攻撃後の後退を詰めるなど造作もなかった。
ズサッ――
一歩から勢いを乗せて大剣を降り下ろす。相手のあの長い攻撃では、回避は愚か防ぐことすら叶わなかったのだろう。
必倒――
「バカな……まさかその剣、魔神の――」
ザシッ――――
「……その名は捨てたんだ」
戦いの呆気なさに私は少しだけ、過去を再生していた。
同時に我へとかえる。
ここがバレたなら次にいくしかない。キルトを背負って、私はまた歩き出した。
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