2人が本棚に入れています
本棚に追加
夜は刻一刻と夜明けに向かい続ける。深淵の森は少しずつ影を薄くしていった。
そんな中、茂みを疾駆する朱葉が真っ赤に目立つ。
追われてはいない。しかし、早くキルトを安全なところにやりたかった。はっきり言って足手纏いなのだろう。
そんなキルトはまだ目覚めてはいなかった。
ふと足を止める。
「どうして私がこんな……」
不満をついに口に出してしまった。運よく彼は寝ていたが、私らしくない。
なんでこんな気にならなければならないんだ!?もう失うのにも、奪われるのにも慣れたはずなのに!
……
「うぅん、母さん……」
「!?」
背中で呟かれてハッとする。内心の魔が一瞬にして晴れた。
私は何をこんなところで時間を食っているんだ?急ごう……お前の生きるべき場所へ――
最初のコメントを投稿しよう!