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「これは……一体……」
背後からの声に反応して身体を振り返らせる。その声を誰だか、知っているような気がして――。
振り返った先には、朱葉が立っていた。しかし、服装は女の子らしく、可愛らしい。
なぜこの時、俺はこの存在が朱葉だと気付いたのだろう。なぜこの瞬間、気付いてしまったのだろう。
そして、彼女に対して何か違和感があったことに、なぜもっと早く気付いてやれなかったのだろう。
「よかった。無事――」
「母さん!どこ!?」
「!?」
この会話で瞬間過ったのは、俺がこの風景からしたら異物で何も干渉できない。
それに気づいた瞬間、嫌な予感が五体と五感を貫き、これ以上見てはいけないと警告していた。
不思議なこの光景から逃げようにも、俺は逃げることが出来ず、ただ無力感に浸りながらこの演劇の続きを見る。
「母さん!母さん!」
赤い髪の少女は燃え盛り崩れていく町を駆けていく。必死に自分が大切だと信じていた世界と人を探しに――。
しかし、やめてほしい。むしろやめてくれ!
……もうこれ以上進んじゃ駄目だ!朱葉!
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