本編

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「出場するのか?」 じいちゃんがチラシをひらひらさせながら、ニヤニヤしている。 「優勝者には賞金10万円かぁ。もちろん出場するよ」 10万円あったらなんでも買える! 「そう言うと思ったぞ。なら、まずは強い黄金カブトムシを手に入れなければならんな。わしの部屋に来なさい」 じいちゃんの後を付いて部屋に入ると、丸テーブルの上に、使い古された虫あみと虫かごが置かれていた。 「もう準備してたの?」 まるで出場することがわかっていたみたいだ。 「わしは虫捕り名人じゃからのう。一緒に行ってやりたいんじゃが、わしはすでに引退しておる」 そうなんだ。 黄金カブトムシがコンジキの森に大量に見つかったあの日に。 もはや、黄金カブトムシを泊まり込んで探し回ったワクワク感を得られることはもうないじゃろう、と言って。 「これをお前にやろう」 じいちゃんは今まで愛用してきた相棒でもある虫あみと虫かごを渡そうとする。 「いいの?」 「ああ、わしの後継ぎはお前しか考えられんからのう。さあ」 「ありがとう。嬉しいよ」 虫あみと虫かごをしっかりと受け取る。 「コンジキの森は、ムシズキの森をさらに越えた場所にある。しかも、かなり広い。数日間テントを張って相撲大会に優勝できそうな黄金カブトムシを探すことになるじゃろう。1人では心細いじゃろうから、家族の誰かと2人で行くとよい。それから、森の主は唯一10センチを超えたオスらしい。優勝するには主を探し出すしかない」 「わかった」 すでにそこまで情報を集めていたなんて、さすがじいちゃんだ。 さっそく台所へ向かい、母ちゃんに事情を話して、3日分のお弁当を2人分作ってくれるように頼む。 「任せなさい。黄金カブトムシを見に行きたいけど、私は家事があるから。優勝目指して頑張るのよ」 「うん!」 あとは、父ちゃんか兄ちゃんか妹だ。 誰と一緒に行こうかなぁ。 父ちゃんは背が高くて力があるが、虫捕りに関しては母ちゃんと同じで初心者だ。 兄ちゃんは木に登るのが得意だけど、虫捕りはゲームでしかやったことがない。 妹は虫が好きで、じいちゃんと3人でムシズキの森にカブトムシを捕まえに行ったこともある。 父ちゃん 2ページへ 兄ちゃん 3ページへ 妹 4ページへ
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