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バイトの作業のひとつではあるが何度やっても慣れない。
割り箸を持つ私の手は明らかにプルプルと震えている。
今すぐにでも逃げ出したい気持ちが渦巻く中、背後から男の声がかかった。
「おい、マドカ。何もたもたしてんだよ、さっさとやれ!」
かったるそうに頭をかく少し猫背のその男は私の雇い主であり、この事務所の主でもある。
私は恨みがましく振り返り睨みつけた。
「そんなこと言ったって五十嵐さん、こんなこと―― ミルワームなんて何度見てもやっても慣れませんよおぉーっ!」
そう、今私が行っている作業は透明なケースの中に入っているオガクズの中から割り箸で探し出すことだ。
あのウネウネとしたカブトムシの幼虫より更に気持ち悪い虫、ミルワームを。
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