始動

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季節は秋。 窓の外では紅葉が色づいてきている。 そろそろ寒くなってくる頃だ。 寒いのやだな。 「だからこの式を変形して…」 数学…わからん。 数学なんてサインコサインとかでギブアップだよ。 教室に、チョークが黒板を叩く音が響き渡り、その度に教室の中の頭が一つまた一つと下がっていく。 この調子だと最後までおきてるのは何人だろう。 あー、暇だ。 次は…、なんだっけ。 まー、なんでも一緒か。 自分の事ながら笑えてくる。 その時チャイムが鳴り響いた。 だらけた空気が今度はうって変わって騒々しくなる。 「マナー。」 呼ばれて振り返る。 ちなみに、私の名前はマナミだ。振り返るとそこには、小さいぽってりとした、かわいい感じのオデブちゃん。 「どしたの?トンちゃん。」 …友達に対して豚ちゃんと呼ぶのはどうなんだと最初は思ったんだけど。 慣れって怖いね。 「ん!!」 目の前に右手が差し出される。 「ん。」 試しにお手をしてみる。 「よしよし。いい子いい子ーって何でやねん!!」 さすが関西人、ノリツッコミ。 「ノートや。ノート見して。」 「やだ。」 瞬間、トンちゃんの顔が1、5倍に膨張。某マジック並みの早業だ。 「そんな事言うんやったら…」 「やったら…?」 「こうや~!」 でた、必殺こちょこちょ! ちょっ、脇だめ!! 「こしょばい!アッハッハ!」 「降参か?降参か?」 「分かったから許してー!」 とはいうもののノートとってなかったな。まぁトンちゃんなら分からないな。 「はいこれ。」 素直にノートを差し出す。 まぁ、結果は変わらないな。 2回連続全欠点だったからな。 うんうん。 「…なんか今物凄い失礼な事考えへんかった?」 「全然。」 失礼ではない。 事実だからね。 そしてまたもチャイムが鳴る。 平凡で退屈な私の日常。 刺激が欲しくないといったら嘘になる。 でも、私はこの平凡が好きだ。
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