OPENING

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 上司からこの地――地球の調査隊員に任命された男は、仲間と共にこの地に訪れていた。  地球は約百年前に発見された惑星のひとつで、ここ三十年前から注目され色々と話題になっている。  その頃から調査の方も盛んになっていき、今でも多くの組織が沢山の調査団を地球へ向かわせているという。 「あまり事を起こさないようにな」  男が調査に向かう前に、彼の上司に言われた言葉だ。  組織が得たデータによれば、この星の文明はそれなりに発達しているが、まだ原始的な部分が目立つ程度の発達らしい。  宇宙開発の方も、太陽系の内側で細々と活動する程度の進み具合。当然男達『異星人』の存在など知るよしもない。  地球のデータを一通り読み上げた後、最後に上司は言った。  「そんな星で調査をしに訪れている調査員達『異星人』の存在が住民に知れたら、一体どれ程の騒動が起きるだろうか」と。 (僕達の事を知らないからとはいえ……ね)  男はいつの日か、地球の資料として観た映画を思い出す。  それは異星人をテーマにした内容だったのだが、劇中の異星人の多くは非道で残虐的な化け物のように描かれ、容姿もグロテスクなものが多かった。 「未知なる生物に対して恐怖する気持ちは理解できるけど、これは流石に偏見的過ぎるよなぁ」  男は一緒に映画を見ていた同僚にそう言うと、同僚は男に対し「これこそが、この地の住民が想像する自分達の姿なのだ」と諭すように言った。 『今回の調査は、とにかく隠密に!』  現在、男や仲間達が乗る宇宙船の船内には、そう書かれた紙が至る所に張られている。  張り紙の内容が示す通り、調査中に騒ぎを起こすと後の調査に重大な支障をきたすのだ。  特に今回の調査はいつも以上に慎重に行う必要があったため、本当は船内から調査だけで終わらせる予定だった。  なのに――。  あろう事か、男は直接地球に降り立ってみたいと言ったのだ。  当然、同僚は激怒した。  下手をすれば甚大な騒動を起こす危険性のあるその行為を、同僚は怒りながら何度も止め、部下達は「行かないでくれ」と男に泣き付いた。  しかし、男は頑としてこの地へと降り立つ事を止めようとはせず、何度も彼らに頼み込み、時には土下座もしていた。  そうしてまで男がこの地へ降りたかった理由。  それはデータだけの姿ではなく、この星の『実際の姿』を見たかったからだ。
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