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「あのさ、あのさ。おじさんは、宇宙人っていると思う?」
男の隣に座っている子供は、彼に対してさっきとは別な事を訊ねてきた。
「……さぁ、ど…どうだろうね」
唐突かつストレートな問いに、男は言葉を濁した。やはり、子供は侮れない。
「ちゃんと答えてよぉ」
「あー……、えぇっと」
さすがに自身がその『宇宙人』だとは言えないし、この子に異星人の存在を教えるのもタブーだ。
制約上且つ事実上『いる』とも『いない』とも答えられない男は、内心ダラダラと冷や汗をかきながら口ごもった。
ふと閃いた男は、問いに答える代わりに子供にある質問を投げかけた。
「君はどうして宇宙人がいると思うんだい?」
上手く意味を呑み込めなかったのか、きょとんとした顔になる子供。
そして一二拍分の間があった後ようやく問いの意味を理解したのか、子供は「えへん!」とうすい胸を反らし得意げに言った。
「凪おじさんが言ってたんだ。『この広い宇宙の中に地球人だけがいるのはおかしいんだ』って!」
「え、そうなの?」
思わず抜けた声を出す男。子供の言った言葉があまりにも意外だったのだ。
この地の住民は太陽系の外にすら行ったことのないくせに自分達以外の『人』の存在すらまともに信じず、まるで架空の生物とでも言うかのように異星人を扱っている。
だから、この星の住人の中でそのような考えを持っている人物がいるとは思いもよらなかったのだ。
「凪おじさんはね、宇宙人を探すお仕事をしているんだぁ」
「そっか、ちなみに宇宙人を探してどうするんだい?」
「宇宙人と友達になるんだって」
男と話すのが嬉しいのか、子供は彼の質問に次々と答えていく。
(普通は奴隷化とか侵略とか考えるものなのにな)
今まで聞いてきた実例を思い返す男。
彼は今まで様々な星を見てきたが、異星人や他惑星の探索を行う場合は、その星への移住や侵略を目的としている事が殆どなのだ。
「凪おじさんは、宇宙人と仲良くなるのが夢なんだよ」
「そっか」
自慢げに話す子供に、にっこりと笑って男は相槌をうつ。
(凪、か……。一度会ってみたいもんだな)
異星に対して自らの信念を持ち、尚且つ異星人と友好関係を持ちたいという『凪』。子供の話を聞きながら、男はまだ見ぬ『凪』という人物を高く評価していた。
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