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ちなみに、仕事をしなくなった神はというと、気の赴くままにワインを飲んだり昼寝をしたりと、すっかり堕落した毎日を送っていた。
ある日のことだった。
「ベナード様、いい加減仕事してください!」
いつものように神がダラダラと過ごしていると、部屋の外から少女の声が部屋に響いた。
見ると可愛らしい一人の天使――侍女天使のリテルが窓から顔をのぞかせていた。
「まったく毎日毎日! よく飽きずにだらけられますよね!!」
そうぶつくさ言いながら、神の了解も得ず勝手に部屋に入る。
「いつになったら仕事するんですか? 本部からの書類が沢山溜まってますよ!?」
そして、神の書斎机を指差した。
彼女の言う通り、机の上には山のように書類の束が積み上げられていた。もちろんそれらの書類は、最近の物だけではない事は言うまでもない。
「あぁ、後でするよ」
彼女の言葉に対し神は面倒くさそうに答える。この日の神は、いつにも増して気だるそうな様子だった。
「いつも同じ事しか言わないじゃないですか!」
神の言葉に声を荒げるリテル。
ここ最近、同じようなやり取りを何度も繰り返している。
「貴方だけですよ、こんなに仕事しないのは! 他の方はちゃんと仕事しているんですから!」
腕組みをしてリテルは神に対し言い放つ。こう見るとどちらが上なのか分からなくなる。
「仕方ないだろ? 僕は『夢』と『遊び心』を司る神なんだ。他の連中とは勝手が違うんだよ」
そう言いながら、神はドサッとソファーに身を投げ出した。ついでに、前のテーブルの上に置いてあったワイングラスを手に取りグラスに口をつけた。
ゴロリと完全にソファーに寝ころび、大きな欠伸をひとつ。
いつものようにダラダラし始める神を見て、リテルは深々と溜息をつく。
「だからといって、全く仕事しない訳にはいきません」
母親のようにお小言を言うリテル。しかし、神はゴロゴロしながら聞こえないふりをしている。
「聞いてるんですか、ベナード様?」
少しリテルの声が低くなるも、神は聞こえないふり。
「………はぁ」
再度ため息をつくリテル。そして溜息のついでに、低い声でボソッと呟く。
「あと、『遊び心』は余計だと思うんですが――」
「…………!」
悪態じみた呟きを捕らえた神の耳がぴくりと動く。
どうやら、彼は結構な地獄耳の持ち主のようだ。神のクセに。
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