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俺は春という季節がとても嫌いだった。
春は出会いと別れの季節。
まさにその通りだった。
それは十年ほど前の話だ。
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幼稚園卒園式前日。
「やだ!俺はまだ幼稚園いきたい!ともやとまだいっしょに遊びたい!小学校にいったらともやと遊べないもん!」
「優…それはできないの…。
我慢しなさい」
この当時の俺には板倉 智也という親友がいた。
智也とは幼稚園までは一緒だったが、住んでいる地域の関係で別々の小学校に通う事になっていた。
俺はそれが嫌で、認めたくなくて、母さんにむちゃくちゃを言って家を飛び出したんだ。
「お母さんなんて嫌いだ!」
バタンッ!
「こら!優、待ちなさい!」
母さんの制止の声も聞かずなりふり構わず走り出した。
そしてがむしゃらに走り、どこかわからない地域に迷い込み、そこにある公園に辿り着いた。
「ここ…どこだろ?」
「おい!お前!」
「えっ?な…なに?」
後ろから声をかけられ、振りかえった先にいたのは自分より恐らく年上と思える少年数名だった。
「ここは俺達の公園だ!許可なく入ってんじゃねぇよ!」
「で…でも公園はみんなのものでしょ?」
「うるさい!お前ら、やっちまえ!」
そしてそこから始まったのは一方的な暴力、最悪の結果だった。
それもそのはずだ。
10歳にも満たないやつが年上数名によってたかって袋たたきにされるのだから。
抵抗しようにも力の差は歴然だった。
だから逆らうのは諦めた。
…………いや、諦めざるを得なかった。
だってそうだろう?
この当時の俺にはなにもできず、くるともわからない助けを待つより、諦めてただひたすら痛みを耐えて、こいつらが満足するのを待つ方が確実だったんだから。
「(どうせ…だれもたすけてくれない…自分ではなにもできない……………なら、たえるしかないよ…)」
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