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「あれから二年。なんやかんやで俺もカレンも、そしてライムも大きくなり、三人で冒険を続けていた。あちこちで悪を倒し、なんやかんやでヒーローだった……が、しかしそれも過去の話。ついに巡り会った魔王との戦いで、俺は取り返しのつかない大怪我をしてしまった。もはや戦線復帰は不能。俺の冒険はここで終わってしまったのだ。しかし、そもそも復帰は必要なかった。俺が負傷した後、カレンとライムは魔王を倒してしまった。こうして訪れた平和な世で、俺はゆったりと、余生を過ごすのだった――」
「……誰に何を言ってるの?」
一人だらだらと語るティトーこと白矢帝斗に対して、呆れた顔を浮かべて言ったのは四季花恋。
「『あれ』がライムのことを指してるならまだ二日しか経ってないし、冒険とかしてないし! ていうか魔王って何?」
「いや……こんな展開だったら楽だろ?」
「楽とかそういう問題じゃなく! こんなことは起こってないし起こりえないの! ていうかティトー、あんたは勇者さま御一行で活躍するつもりなの!?」
「いや、応援要員」
「ねーよ!」
「言葉乱れてんぞカレン」
はあはあと荒い息をしているカレンは、ティトーの冷めた指摘にがっくりと肩を落とす。正直者や真面目な者はバカを見るのである。
しかし、ティトーとの付き合いは長い。カレンもダテに、バカを見続けてきてはいない。
「まあいいや……応援要員でも勇者の一味になろうとしてるんだよね。それ叶うくらいに強くなろうね」
良い方向に捉えて奮起させようと試みる。
そしてティトーもいつも通りこう返す。
「やだよめんどくさい」
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