朝までぐっすり

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出産から今まで、もっといえば妊娠中から、朝まで眠ったことがない。 妊娠中はお腹が気になり、出産してからは母乳を欲しがる我が子に起こされるためだ。 起こされずとも、寝返りをうったとか、寝言で「あー…」と言ったとか、そんなことでも目が覚める。 ちー坊は第1子。なにもかも初めてのため、生後半年くらいまでは大変だった。 彼が1歳半を過ぎた今にして思えば、出産の疲れが抜けていなかったのだろう。とにかく、1日でいいから、朝までぐっすり眠りたいと、毎日思っていた。 泣きたくなりながら母乳を与え、さぁ早く寝ておくれ~と祈る私を殴りつけるような夫のいびき…。枕を投げつけたこともあったっけ…。 育児にも慣れ、体も正常に戻った今では、こうして午前4時から文章を書く始末である。 短い睡眠でも頑張れる女ならではのホルモンは、以外なところでも役に立った。 長く病気と果敢に戦ってきた母が、ついに起き上がることができなくなり、寝たきりになってしまった。 ずっと入院したまま亡くなるのではかわいそうだし、母も帰りたいと言うので、自宅介護に踏み切った。 自宅といっても父と母の家―つまり実家である。私は、子供を連れて、週に1~2度、泊まりがけで手伝いに来ている。 普通なら、夜中の体位替えやおむつ交換は特別なことだろうけど、なんのことはない、ちー坊に母乳をあげるついでに母の面倒をみれば、タイミングばっちりなのである。 3日続けて夜中に起きるとヘトヘトになる父と違い、母乳を与えている間の女性というのは、短時間でも熟睡し、疲れを回復できるようになっている。 育児を経験せずに介護に突入していたら、夜中に起きることも、おむつを替えることも、きっと辛かったに違いない。 ありがとう、神様、このタイミング。 ありがとう、ちー坊、私を強い子に育ててくれて。
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