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一軒のおもちゃ屋がある。
小さな町の商店街の一角に建ち並ぶこの店。外観は煉瓦(レンガ)造りの壁に赤い屋根から煙突が顔を覗かせ、木製の扉には来客を告げる大きな鈴。小振りなその佇まいは、絵本から飛び出したかの様な温かさを醸し出している。
そこへ、一人の男の子が駆け寄った。男の子は店の前でぴたりと足を止めると、扉の横――ガラス張りのショーウインドウをじっと見上げた。
『走っちゃ駄目でしょう』
『ママ』後を追って来た母親に、男の子が笑みを向ける。『あれ、欲しい』
男の子の小さな手が、ショーウインドウに並べられたおもちゃの一つを指差した。
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