ブリキのココロ

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 すると母親は、仕方ない、といった風に苦笑気味に(それでも何処か温もりある微笑で)頷くと、男の子の手を握り店の扉を開けた。  扉の鈴が、小さく鳴り響く。  暫くすると、ショーウインドウの鍵が開けられ、男の子のお目当てのおもちゃが店主によって取り出される。  二度目の鈴の音が、寂しげに鳴いた。  店を後にする男の子の両手には、綺麗に包装されたおもちゃが抱えられていた。その顔は、喜びに溢れた満面の笑みである。  と、そんな男の子の横顔を見詰める一体のおもちゃがいた。  ショーウインドウの棚の上に並べられた、彼はブリキのロボット。  幸せそうな男の子の横顔を眺めるロボットの耳には、鈴の音の余韻だけが聞こえていた。
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