彼女

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すると、浅倉は少し驚いた顔をした。僕はその顔に驚いて尋ねる。 「……何?」 「えっ! あ、いやー……。意外だったもので。純くんって他人に興味なさそうだからさ。そういう人間味溢れる行動に驚かされました」 ……笑顔で中々失礼な事を言う。 「……別に他人に興味ないとか、そういうのじゃないよ。ただコミュニケーションが苦手なだけ」 「うわっ! 今の発言、すごく人間っぽい」 「……人間だもん」 「アハハ。冗談だよ。怒らないでー。……ありがとね。純くん。優しいね」 その率直なお礼に免疫のない僕はモゴモゴと口ごもる。 「えっ、あ、いや、……どう、いたしまして」  僕は昔からそうだ。物心ついた頃から、他人とのコミュニケーションを嫌った。世界を広げることを、嫌った。そうやって狭い世界で生きてきたから、こういう時にどんな言葉を発すればいいのか分からない。  結果、黙る。なにも発さない。 「純くんってさー」 それでも浅倉は構わず話を続けた。 「何型?」 何気ない会話だった。 しかし、それが嬉しかった。 「Bだけど」 そういうと浅倉は少し驚いた顔をした。 「ビィかぁ。ちょっと意外。私的にはABかと思ったんだけどなぁ」 「えーびー……?」 そんなこと言われたのは浅倉が初めてだ。大体は当ててくる。 当てられても全然嬉しくないが。 「そー。AB。なんか純くんって他の人と違うっていうか、うん。なんて言うのかな。オーラ? って言うの? 分かんないけど初めて見たときからなんか感じたんだよね! こうビビッと!」 「なに、それ」 僕はいつの間にか笑っていた。浅倉は人を楽しませるのも得意らしい。 職員室から教室までの距離がやけに惜しく感じた。 教室に入ると、そこはもう別世界。僕が彼女に話しかけることなどできはしなかった。 けれど、浅倉はそれからちょくちょく僕に話しかけてくれるようになった。 「さっきの授業さ~」とか「今日のお弁当忘れた!」とか。 そういう何気ない会話だけど。僕は毎日それが楽しみで仕方なくなっていた。 僕が特別ではないんだろうと、分かってはいたけど。 僕が彼女に恋するまでそう時間はかからなかった。 いや、あるいは初めから恋をしていたのかもしれない。
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