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ランドリッヒ公爵の館に、今日も人買いがやって来た。
人買いは一人の少女を連れていた。
「この瞬く星のように美しい娘は、グラヌスと申します。ランドリッヒさま」
紹介されたグラヌスは館の主人を睨みつけた。
娘というには躊躇するたわわな果実を二つ、胸元に実らせ、髪は彼女の柔らかな頬を守るように金色に輝いていた。
反抗的な瞳もまた愛くるしい。
だが見た目の美しさと高慢なその性格は、切っても切り離せない。
「落ちぶれた貴族の娘でございます、ランドリッヒさま」
人買いは手錠の鎖をじゃらりと引っ張ったが、グラヌスはそれに反抗した。
「おっと。お見苦しいところを。見てのとおり、このグラヌスは大変美しいのですが、どうにも扱いにくい」
ランドリッヒと呼ばれた男は「そうか。だが美しいな」と一言微笑んだ。
「ええ、このような娘を扱えるのは、この大陸よりもお心の広い、ランドリッヒさまだけかと」
ランドリッヒは、砂漠の砂のようにきめ細かな肌で長い黒髪の優男だった。
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