プロローグ

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教室の一番後ろの窓際。 一人静かに読書をする少女。 名を、佐倉みやこという。 黒くて艶のある長髪。人形のような顔立ち。しとやかな仕草。 現代の大和撫子を連想させる彼女に、男女問わずに人気だった。 けれど彼女はさして興味を見せずに、今日も読書に励んでいる。 そんな彼女に、俺は人一倍興味を持った。 好きな作家や、好きな音楽を聞いていくうちに、俺の趣味とよく合うことが分かった。 ―古い文学や音楽が好きな人って中々いなくて。 そう言って笑う彼女につられて笑ったり。 昼に一緒に昼食をとったり。 数学が弱いらしい彼女に遅くまで図書館で教えたり。 予想以上に趣味が合う彼女といる時間は楽しかった。 数少ない友人の三田に付き合えばと冷やかされたりもしたが、まだ言うつもりはない。 もしフラれてしまったらもうこんな話はできない。できたとしてもぎくしゃくしてしまうだろう。 それに、まだこの心地好い関係を続けていたい。 できれば、いつまでも― .
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