【文久3年 10月】

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少し生温い風が、僕の前髪を揺らした。 「雨でも降りそうな風だね…。」 前方を不機嫌そうな顔で歩く人物に、声をかけた。 「あぁ…。」 彼、斎藤一くんは、僕の持っている御菓子を見て呆れていた。 「そんなに機嫌悪くならないでくれる?近藤さんと山南さんにも頼まれて買ったんだから!」 僕が口を尖らせていると、一くんは「分かっている。」ってだけ、返答して歩く。 こう言うところ、誰かさんにそっくりなんだよなぁ…。 屯所への道を歩いていると、不意に一くんがピタリと歩みを止めた。 「…一くん?」
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