【文久3年 10月】

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一くんは、一点を見つめたまま黙ってしまった。 僕も彼と同じ方に視線を向ける。 そこには、木が立っている。 屯所のすぐ傍の木で、子供達がよく登って遊ぶ木だ。 その木の枯葉からだらりと垂れる様に、人の手が見え隠れしていた。 「総司。あれを何だと思う?」 「手、じゃない?」 どうせ、子供が木に登って、そのまま居眠りでもしてるんだろう。 「…では、あれは生きていると思うか?」 「はぁ?」 僕が一くんに視線を戻そうと思った瞬間、再び生温い風が吹き抜ける。 「あっ…。」 「えっ!?」
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