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一くんは、一点を見つめたまま黙ってしまった。
僕も彼と同じ方に視線を向ける。
そこには、木が立っている。
屯所のすぐ傍の木で、子供達がよく登って遊ぶ木だ。
その木の枯葉からだらりと垂れる様に、人の手が見え隠れしていた。
「総司。あれを何だと思う?」
「手、じゃない?」
どうせ、子供が木に登って、そのまま居眠りでもしてるんだろう。
「…では、あれは生きていると思うか?」
「はぁ?」
僕が一くんに視線を戻そうと思った瞬間、再び生温い風が吹き抜ける。
「あっ…。」
「えっ!?」
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