【文久3年 10月】

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木の枝が大きく揺れた。 と、同時にするりと手の主が枝から転げ落ちた。 ふわり。 再び吹く風。 その風の先に、良く見慣れた人物が居た。 彼は、木から転げ落ちた人を、何事も無かったかの様に抱き止めた。 「真田?」 「悠くん?」 真田悠利。本名は夜月悠哉。一くんを慕っている平隊士だ。 「真田、その者は?」 ゆっくり彼に近付く一くんは、いつでも刀を抜ける様に、左手を刀の柄に添えた。 「斎藤さん。これは、私の妹です。」 「妹?」 僕が聞き返せば、彼は「はい。」と答え微笑んだ。
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