【時空蝕】

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紫苑が兄の部屋に近づくと、足元に生温い風が吹き始めた。 辺りの窓は閉めきっている。その上、今この時代には自然発生する風は存在しない。 有るとするなら、【時空蝕】発生時に生じる嵐のみだ。 ふわり。もわり。 紫苑の足に絡み付く風。 ”嫌だ…!!” 兄の声がした。恐怖に染まった声音だ。 「新兄!!」 勢い良く開いたドアの向こうには、緑色の風が渦を巻いていた。 兄の姿は無かった。 「新兄さん!?」 「紫苑??ダメだ!!逃げなさい!!」 渦の中心から兄の声がする。8年前と同じだ…。 「嫌だ!!兄さん!!」
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