374人が本棚に入れています
本棚に追加
紫苑は必死に手を伸ばした。しかし、風に体を押され、渦の中心に手は届かない。
「紫苑!!そこから、…早ッ!!」
”--------逃げろ!!”
兄の声が途切れた瞬間、緑色の風が次第に透明になり、兄の姿は無かった。
しかし、何故だろうか。紫苑の足は、前にも後ろにも動くことが出来ないのだ。
紫苑が自分の足元に視線を移せば、今度は蒼白い風がまとわり付いていた。
ふわり。もわり。
先程から流れていた風だ。
この風は、兄の部屋から流れて来ていた風ではなく、自分にまとわり付いていた風だったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!