【時空蝕】

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紫苑は必死に手を伸ばした。しかし、風に体を押され、渦の中心に手は届かない。 「紫苑!!そこから、…早ッ!!」 ”--------逃げろ!!” 兄の声が途切れた瞬間、緑色の風が次第に透明になり、兄の姿は無かった。 しかし、何故だろうか。紫苑の足は、前にも後ろにも動くことが出来ないのだ。 紫苑が自分の足元に視線を移せば、今度は蒼白い風がまとわり付いていた。 ふわり。もわり。 先程から流れていた風だ。 この風は、兄の部屋から流れて来ていた風ではなく、自分にまとわり付いていた風だったのだ。
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