第1章

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「ほう…隠れておったワシを見破りおったわ」 嬉しそうに頬を緩めていると、背後に人の気配がうまれる。 「ご機嫌ですね…何かありましたか?」 と、顔色を確認すると、女性の声が尋ねてきた。 「今年の児らは育てがいがあるぞ」 その言葉で理解したのか、声をかけた女性も微笑む。 彼女にとっても楽しみで仕方ない事なのだ。 二人は昂斗が校門を出るまでその場から見送る。 だが、昂斗が校門を出た瞬間には二人とも音もたてずに消えていた。 昂斗は15分程度の道をゆっくり家に向かって歩いていく。 そこである不安がよぎる… 今、家には瑠璃が一人… 何もせずに「待っている」はずがない! 昂斗は焦って走り出した。 5分後には家に着き、カギを開けようとカギを差し込み、回しきり。 何の覚悟かはわからない覚悟を決めて…ドアを開くと… 料理の途中だったのか、エプロン姿の瑠璃がキッチンの方から顔を覗かせてくる。 昂斗は普通にあがろうとすると、火を消して瑠璃が出迎えてくれる。 「にぃや、おかえりなさい。早かったね」 「ただいま、瑠璃」 そんな会話をしてキッチンに向かうと、いつもより一品多く用意されている気配が満載だった。 昂斗がキッチンの入り口で立ち止まると、チャンスとばかりに瑠璃が抱きつく。
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