あやかし

2/7
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
――初めて触れた感触。 生きた人間の肌。 生暖かく、柔らかい。 白い結晶がちらつく中、手を擦り合わせ息を吹きかける姿が目に入る。 …ああ、空気中の温度が冷えてきたのだな。 先程までは温かった其れも、徐々に熱を奪われ始め、頬はうっすらと赤みを帯び冷えてゆく。 自分とはこんなにも違うものなのか。 不便な入れ物に閉じ込められた魂は、文句も言わずに、必死で今を生きている。 寒さに耐え、暑さに耐え、痛みに耐え。 そうまでして、何故生きる。 欲の塊である自分には、理解し難いものだった――  
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!