第一回

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ぎしり、と音を立てて椅子の後ろから木下君の両腕で挟まれた。 肩に置かれた木下君の顔の所為で耳に吐息がかかる。 「せんぱい」 アタシの耳をくすぐる甘い声。 少しだけ脈打つ心臓に手を当ててため息一つ。 「先輩をからかうのもいい加減にしなさい」 嗚呼、可愛いくない。 いつも余裕を気取っていたいという見栄が出ている。 焦ったり、赤面したりすると可愛いの女の子でいられるのだろう。 そうなれば、きっと彼もアタシを可愛がってくれるのだろうか。
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