第一回

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――馬鹿馬鹿しい。 「木下君」 耳に寄せられる唇にため息を吐いて木下君の名前を呼ぶ。 拒絶を表すために。 「……わかりました。今日は此処までにしておきます」 包まれていた温もりが離れて、冷たい風が差し込んでくる。 眼鏡をかけて姿勢を正してパソコンに向かい合う。 「で、何をしているのかしら?」 つんつん、と髪の毛を引っ張られる感覚に目だけで横を見ると木下君がアタシの髪の毛を指先で弄んでいた。 くるくると指先に巻かれて引っ張られる。 適当に括っていた所為で絡まっている髪の毛は途中で指に引っかかって引っ張られていた。
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