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お酒と汗の入り混じった匂いに、生臭い匂いが込める一室。
月明かりだけが唯一の照明となって、光景だけ見れば幻想的かも知れない。
でも、生々しい匂いと体を巡る熱が現実だと私に告げる。
それだけ見れば幸福だと思える。
でも、それ以外にも隣で寝ている男の指輪を見ると心は冷えていく。
宝石はついているけれど、シンプルで輝いているその指輪。
私の指にはないもの。
「那月」
私も単純なもので、名前を呼ばれただけで冷めた心がまた温められている。
今だけでもいい、今だけでも、彼が私を見てくれるのなら。
例えその心の中が私以外の、愛する女の人で埋められているとしても、ちょっとの隙間の中でも私がいるなら。
「瞬。奥さんはいいの?」
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