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「本当に杏なの…?」 杏は一つ下の弟で、最後に杏と会ったのは去年の夏休み。 この学園全寮制だけど、夏休みだけは帰省できることになってるから。 その時の杏は別に普通だった。 それが…人ってちょっと見ない間にこんなに変わるのかな? でも声は杏なんだよなぁ…。 「そうだよっ杏だよ!柚子兄なら気付いてくれると思ってたんだ!!」 「「いや―っ!!隊長が!!」」 「離れろよオタク!」 周りが騒がしいのは多分この状況に原因があると思う。 杏に抱きしめられてる。 男同士の抱擁なんて見たくないよね。 でも僕も、杏と会えて嬉しかったりするんだ。 だから、周りの皆さんには我慢していただいて… 「杏!会いたかったよー!」 僕も抱き付き返す。 「「「………っ。」」」 やっぱ家族っていいなぁ。 あれ?なんか周りが静かになっちゃった。 そんなに気分悪かったのかな。 なんか申し訳ない。 「た…隊長?どういうことです?その…いつもは何事にも無表情でいられるのに…。」 無表情…? あ……。 そうだった!!僕無表情な子として過ごしてたんだった!! 杏と会えた嬉しさでそんな設定すっかり忘れてた。 うわー!どうしよう。きっと今、皆にこいつ誰?って思われてるんだ! 「柚子兄、もう演技はいいよ。これからは俺が居るんだし。」 笑顔でそう言う杏。 え…?今何て…? いや、実は今までさー杏に言われて演技してたわけ。 でも何で急に…? そりゃもういいなら普通でいた方がラクだけどさー。 そんなあっさりと演技やめてよかったんだ。 今までの僕の苦労って何だったんだろう。 僕って表情豊かな方だから、今まで本当大変だったんだから! 「…いい加減離れろ。それと今の話本当か?」 うわっ。 ビックリした。 会長ってばいきなり後ろから引っ張るんだもん。 ていうか今の聞いてたの…? 「なんだよ、お前!だったら何なんだよ!!」 会長に突っ掛かる杏。 そういえば会長がさっきキスしてたのって杏だよね? ていうことは…仮にも自分の恋人と弟がキスしてる現場みちゃった僕って…本当運悪いよね。
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