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2. あなたと初めて出逢ったのは。 2年前の、ある夏の日のことだった。 蒸し暑い、五反田駅のホーム。 徹夜で仕事をしたあたしは。 気分が悪くなって、ホームのベンチに座り込んだ。 そのころ。 仕事にも、人生にも行き詰まっていたあたしは。 こんな風になっていても。 誰にも構って欲しくない、なんて。 すごく後ろ向きな気持ちでいた。 ぐるんぐるんと、景色が回った。 あたしは、頭を抱えて目を閉じる。 そのとき。 「大丈夫?顔、真っ青だよ。駅員さん、呼ぼうか?」 そんな風に、優しく声を掛けてくれたあなたに。 「いいえ、大丈夫ですから。ほっておいてください!」って。 あたしは、そんな失礼なことを言ってしまった。 それでも、あなたは。 ニッコリと笑って、あたしにこう言ってくれた。 「ムリしなくても、大丈夫!だって明日は、きっと良い日だから、さ……。じゃぁ、気をつけて!」って。 そんな、あなたの爽やかな笑顔に。 あたしの胸は、そのときドキっとした。 電車に乗って、行ってしまったあなたに。 「ありがとう!」って、言えなかったことを。 あたしは、ものすごく後悔していた。 もしも、またあなたに逢えたら。 必ずあなたに、お礼を言うんだって。 あたしは、そのとき決心した。 あなたに、再び逢えたのは。 奇跡的に、ほんの3日後のことだった。 五反田駅のホームで。 あたしは、人ごみの中にあなたを見つけた。 えっ、行っちゃう!? あたしはあなたに走り寄って、あなたのジャケットの裾を無理やり捕まえた。 一瞬、ビックリした顔をしたあなたは。 あたしを見て。 「やぁ、今日は良い日?」って。 また、ニッコリと笑ってくれた。 あたしは、そんなあなたのことを。 そのとき、もう大好きになってしまっていた。 そして。 あたしたちの幸せな時間は、そのとき始まったの。
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