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鞄の中から、持って来た猫缶を出そうとしたら、何やら人の気配。もしかしたら、飼いたいって思ってくれてる人かも!
振り向いたけど、そこはただの草むらしかなくて……。
「なんだ風か。」
この猫にはマフラーなんかじゃなくて、猫缶なんかじゃくて、もっと暖かい。屋根のある家が必要なんだろうな……。
それでも、かじかんだ手で開けた猫缶から美味しそうに食べる姿を見ると安心する。
「しっかり元気でこの冬を越すんだぞ!君が食べてる時間はずっと見守っててやるからなっ。」
無邪気に猫缶に飛び付いてる儚くて小さな毛玉が無性に愛しくなる。
「私も両親が離婚しちゃってさ?お父さんと暮らしてるんだけど、お父さん仕事が忙しいから、家ではいっつも1人なんだよね。お前も1人は嫌だよねぇ。ずっと一緒にいてあげられなくてゴメンね。」
ニィ
猫缶で顔じゅう汚した姿で私の方を見る。
なんか。笑ってくれた気がした。
ずっと一緒。夢みたいな言葉。
そんなの無理だって分かってる。
それでも………。
私はまだ後ろに彼が近づいてる事を知らない。
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