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次に目を覚ましたら、優くんの顔が1番に目に入った。
「優くん…」
「あ、目覚ましたか。今先生呼んでくる」
そう言って優くんはどこかに行ってしまった。
ここ、わたしの病室。
そっか、わたしまた倒れちゃったのか。
3時間近く、外で優くん待ってたからかな。無理しちゃだめって言われたのに。
「未来ちゃん。大丈夫?」
わたしの主治医の井上先生が優くんと入ってきた。
井上先生はなかなかのイケメンで、若いのに腕がいいらしい。
「井上先生。はい、大丈夫です」
「あんまり無理しちゃだめって言ったのに。また勝手に外に出たの?」
「…ごめんなさい」
「まあ元気なのはいいけどね。無理したらまた倒れちゃうからね。気をつけてね」
「は~い」
「それじゃあね」
井上先生はそれだけ言うと、病室を出て行った。
「あ、優くん!ごめんね。いきなり倒れてびっくりしたよね」
わたしは明るく話す。
余命1年がバレないように。
「いや、いいけど…」
「わたし、よく倒れちゃうんだよね!ほんと、貧弱には困っちゃうね!」
「…おまえってさ。なんの病気なの?」
優くんは真剣だ。
「病気っていうかさ、体が弱くて風邪とかでも結構辛くて、だから入院してて…」
わたしは必死で話す。
悟られないように。
泣きたい気持ちも全部隠して。
「…そっか」
優くんはそれ以上なにも聞かなかった。
代わりに自分のことを話してくれた。
「俺さ、陸上やってたんだけどさ。友達にスパイクで足踏まれちゃって、走れなくなっちまって。それで一応、リハビリってことで通院してんだ」
この前、友達が必死で謝ってたのは、足踏んじゃったからなのか…。
「そーなんだ…」
「正直辛いけど、俺は頑張るよ」
優くんは、きっとわたしがなにか重大な病気ってこと気付いてる。
たぶん励ましてくれたんだ。
ほんとは自分のこと、話したくないはずなのに、わたしを応援するために、話してくれたんだ。
優くんは、やっぱり優しい。
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