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いつの間にかうとうとしていたようで、気が付けば先程まで少し騒がしかった校舎内がしん、と静まり返っていた。 (しまった、休み時間終わってる…?) 慌てて立ち上がったら一気に視界が暗転した。 クラクラする、立ち眩みかもしれない。他人事のように頭で考えて重力に身を任せた。 身体が斜めになって倒れていくのが分かる。このまま地面に叩き付けられるのだろうと思っていた、そのとき。 「おっ、と!」 「!!」 「ギリギリセーフ?大丈夫か、あんた」 見知らぬ男が地面とのクッションになるよう抱き止めてくれた。おかげで僕は痛い思いをせずにすんだのだ。 そしてその見知らぬ彼は抱き寄せるようにして僕の顔を覗き込んだ。 「…‥」 「…あの、何か‥??」 「あ、いや、そうだ。怪我ないか?」 「‥お陰様で。ありがとうございます」 ゆっくり立ち上がってクラクラする頭を押さえる。少し日に当たりすぎたようだ。 続いて助けてくれた男も立ち上がろうとしたのでつい、手を差し出してしまった。 .
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