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「君が嫌ならしょうがない。でも、それだとまたあそこに戻らなくてはいけないよ。それでもいいのかい?」
目を細めて笑ったような表情だった。だけど何故かこの人は笑っちゃいないと思った。
あの場所に戻るのは怖い。何をさせられるのかも分からない。
だけど同じくらいこの人も怖い。
僕を見ているはずの真っ黒い目には確かに僕が映っているのに、ただそれだけだった。
この人は僕を見ていない、と思った。
多分、子供の持つ本能のようなものだと思う。
涙を目に溜めて何も答えられない僕の手をさっきと同じようにひいてその人は僕をとても綺麗で広い部屋に連れて行った。
ここも、あの倉庫と同じなのだろうか。
一人になったとき、僕の手足はまた震えていた。
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