エピソード3 グレイプニル

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「悪いねぇお兄さん。俺は客じゃないんだ」  次なる来訪者の第一声がこれであった……。  接客時間より接客してない時間の方が圧倒的に長い店「魔法の道具屋さん」。  そんな暇な店でも、稀に客はやって来る……と言っても、まだまともに客と呼べる者は来た例がないが……。  ――とはいえ、その稀が起きた。  店内にいた――魔女になりたいのに、商人に弟子入りしたチンチクリン少女。酒井茜と――何時も笑顔を絶やさない、青年店主キースは声を揃え、 『いらっしゃいませ』  と言ったが……返ってきたのは冒頭の返事だった。  快く迎え入れるつもりが、いきなり出鼻を挫かれた……といった感じになってしまったが、キースは改めて、 「ではどういった御用件でしょう?」  と男に訊ねた。  男は――年は30代前半といったところか、随分とくたびれたスーツを身に纏い、ボサボサの髪に無精髭といった風貌だ。
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