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電気は美穂の手によってほぼすべてけされてあり、唯一の蛍光灯は受付のみ。
帰っていいものか迷っていると、階段を下りてくる足音が聞こえる。
やっと挨拶が出来る。
思わず身構えた私の前に現れたのは、初めて見る女性だった。
慎重は私と同じくらいだが、患者の中には見なかった姿だと思う。
誰か、と問いかける間もなく口を開いたのは相手だった。
「色々覚えるまでは大変だと思うけど、頑張ってね。もう終わりだから帰っていいよ」
頭の中にいくつものクエスチョンマークが浮かぶ。
どうやら二階にいたと思われるその女性は、歳格好を見れば医師と同じくらいに見える。
美穂が妻かと勘違いをしたが、この女性が妻なのか。
外観は一軒家であるこの二階は住まいだと思っていたが、違うのか。
だとすれば、この女性は一人で挨拶をしにおりてきてくれたのか。
「お疲れさまでした。頑張りますので、よろしくお願いします」
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