面接

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梅雨に差しかかったある午後。 私は小さな歯科医院の待合室にいた。 そこは私の生まれ育った地元。 卒業した中学校のほぼ隣といえる位置にある。 そして、私が中学校にいた頃からそこは開業していた。 「先生が来ますのでお待ち下さい」 受付の女性は細い綺麗な人だった。 お辞儀をして待合室のソファに腰かける。 12時で午前の診療は終わるといい、その時間に面接に来てと指定されたのは三日前。 新しい場所への緊張と、社会への諦めが心に渦巻く。 それでも入った時のことを考えて、それなりの人間関係を保つためにも、愛想をよくした。
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