君と通学路。

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いってきます。なんて、言う時間さえないくらいの大遅刻。 「…、あーもう、いきなり遅刻か、」 なんて。飛び出した家だったけど、君と偶然、運命のような出逢いをしたから。 私は、珍しく。 遅刻もいいかも、なんて思った。 ──────────────君と通学路。 どたばた。どたばた。 階段を急いで下りた私は何も言わずに家を飛び出す。 今日から高校生なんて、全く実感のない私。 「急がなきゃ、…」って。 お母さんに持たされたパンを片手に走る。 すっかり春色に染まったいつもと変わらない住宅街。 綺麗な淡いピンク色をした桜を少し見上げながら走っていると、目の前に人が突然現れた。もうその時点で時既に遅し。 「ぅわっ…、」 「…、きゃっ」 暖かいアスファルトに尻をつく。 手に持っていたパンも地面に放り出されて。 ぶつかった子に気付かれないよう少しため息をついた。それから、身体を起こして立ち上がり、ぶつかったその子に手を差しのべる。 「いてて、…すいません、大丈夫ですか?」 「あっ、こちらこそ、すいません…」 彼女は手をパンパンと叩いて顔をあげた。 少し上目遣いになるこの位置。 春風で桜が舞って、彼女の髪を靡かせて。 なんだか、顔が熱くなったのは気のせいだろうか。いや、きっと気のせいなんかじゃなくて。 同じ制服を纏ったその女の子が、そっと私の手をとって微笑んだから。 私は、やっぱり顔が熱くなったんだと思う。  
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