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だが、ただの中二の俺が逃げきれるわけがない。
全身を鎧で武装した兵隊が槍的なものを俺に投げつけてきた。その槍が俺の頬をかすめる。足が震えて動けない。
そんな最悪の状況にもかかわらず俺の頭に昨日読んだ漫画の台詞が思い浮かんだ。
「我が両足に封印されし神よ!我に光をともしたまえ!封印解除!!」
何も起きない。当たり前だ。自分でも分かっているんだ、そんなのないんだって。
「腹痛い……。てかここどこ?」
いつの間にか廃墟が建ち並ぶ見たこともない場所に出ていた。
「ほんとどこだよここ。はぁ。もういいや……」
どこに逃げればいいのか分からない。兵隊の足音が近づいてきている。覚悟を決めて立ち上がった時、いきなり右腕を引っ張られた。
「兵隊さん兵隊さん、逃げて申し訳ございませんでした。」
ただひたすら謝った、地面に頭こすりつけながら。プライドなんて無い。死なないのなら何だってする。
「しっ!黙ってて!」
その小さな声は耳元で聞こえた。言われるがままに口を閉じる。
兵隊の足音が遠ざかっていく。
逆光のせいで誰だかわからない。俺は必死に目を凝らしたがやっぱり見えない。「はぁどうやらまいたみたいね。」
ため息混
じりのその声はさっきよりはっきり聞こえた。
「だ、誰ですか?」
「あぁごめんね。」
太陽がかげったのか謎の人の顔が見えた。
年は俺より少し上ぐらいで軽くウェーブした茶色の髪からは甘い香りがする。透き通るような白い肌、整えられた眉に大きな目。
「私は美空美春。とりあえずここ危険だからこっちきて。」
俺の目の前に現れたのはまるで漫画のヒロインがそのまま現世に誕生したような美少女だった。
「あの美空さん?なんで俺のことを?」
「うっさい。とにかくきて!」
つんけんとした態度を取りながら美空さんの顔には未だ緊張感が漂っていた。
ボサボサになった髪を整えながらどんどんビルの間を進む美空さんについていく。
「どこ行くの?」
俺の質問を無視して美空さんは入り組んだ廃墟の間をするすると通り抜けていった。
「とにかくこの階段降りて。」
俺が躊躇っていると後ろから美空さんの怒号が飛ぶ。
「早く!」
俺は突然蹴られた。視界がクルクルと回って気持ちが悪い。
そして階段を転げ落ちた先で俺が見たのは驚愕の光景だった。
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