プロローグ

4/6
前へ
/64ページ
次へ
俺とモモはアパートの近くのバス停まで歩く。 モモは誰にも見えてないからいつも会社まで連れていってるのである。 バス停にはもうバスが来ていて急いで乗り込む。 そして空いてる席を見つけて座る。 俺は窓側に座り、その隣にモモを座らせる。 隣に座るモモを見る。モモはこっちを見て微笑む。 『どうしたの?』 不思議そうに俺の顔を覗き込む。 彼女の事を説明しよう。 このような妄想を《タルパ》という。 タルパとはチベット密教に伝わる秘奥義で無から魂を生み出すと言うことらしい。 方法はまず作りたい物を想像する。 外見や性格などの細かな設定を頭に思い浮かべる。 その想像した物を現実世界に重ね合わせる。 そしてそれに話しかける。 相手の台詞はあらかじめ考えておき、『今日は暖かいね。』と話しかけると『そうだね。』と返すような感じで会話を成立させていく。 それをずっと続けると相手が本当に話しているという錯覚に陥る。 最初は作画崩壊、人格崩壊、謎の違和感でなかなか上手く出来ないが、数年かけて訓練すればまるで本当の人間のように会話をしたり出来るのだ。 頭の中で説明してみたが悲しくなってきた。 俺はモモ以外の人間とはまともに話せない。 会社では無口で無愛想だが手際の良さと真面目と言うことで酷い扱いはされてない。 就職試験の面接は苦労しましたよ・・・。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加